「丸ノコ」と聞くと、頭をよぎるのが「キックバック!」。
やっぱり怖いですよねぇ~。
突然「ガツン!」とくる衝撃は、DIYになれた私でも「ドキッ」とさせられることがあります。
でも、「手持ち丸ノコ」の場合は、基本的な安全対策を理解し、それを実行することで、危険を回避することができるんです。
もちろん、油断は禁物ですが、DIY初心者から中級者レベルにステップアップしてきたあなたなら、そろそろ丸ノコに挑戦する時期?ですよね。
今回の記事では、丸ノコを使い始めるときに、大きなハードルとなる「キックバック」の正体を明らかにして、心理的、技術的に克服するための方法を紹介します。
そして、丸のこキックバック対策に有効なチップソー(丸鋸刃)も紹介しますので、参考にして下さい。
丸ノコの「キックバック」て、どんな現象?
丸ノコを使っていて起こる「キックバック」とは、切断しようとする「回転刃=チップソー」が材料の抵抗に負けて「はじき返される」現象を言います。
一般的に私たちが使用する「手持ち式の丸ノコ」の場合は、「はじき返される」というよりも、「ガツンっとロックする」といった表現が的確かも知れません。
今回は、DIYでよく使われる「手持ち式丸ノコ」に焦点を絞り、説明を進めていきましょう。
※固定式の「卓上丸ノコなど」で起こる「キックバック」は、「手持ち式丸ノコ」の現象とは少し異なり、危険度が高くなるので注意してください。
丸ノコの「キックバック」- 原因と対策
1.材料の「たわみ」によって発生するキックバック
原因
切り始めはスムーズにいきますが、切断が進むことで材料がたわみ始め、下図のように回転刃の側面を圧迫することでキックバックが発生します。
枕木が片面だけの場合も
対策
下図のように枕木を4本にすると、切断が進んでも材料全体が安定するので、キックバックが起こりにくくなります。
2.丸ノコを真っすぐに押していない場合に起こるキックバック
原因
下図のように、丸ノコを不用意に傾けて押したり、斜めに押してしまったりすることで、ノコ刃の側面が材料に圧迫され、キックバックが発生します。
多くの場合、丸ノコ本体を保持する力が不十分であったり、強く押しすぎたりすることが原因となっています。
対策
丸ノコをしっかりと保持するために、グリップ力の高い作業グローブを使い、無理に押さないで切断線に沿ってユックリと切り進めましょう。
丸ノコ定規を使うのも効果的です。
㊟軍手は巻き込み事故の元、とても危険なので絶対に使わないでください!
3.材料が切れにくくて起こるキックバック
原因
ノコ刃が切断する材料に適していない場合や、ノコ刃が古くなり切れ病んできた場合にも、キックバックを起こすことがあります。
対策
丸ノコの回転が不安定になり焦げた臭いがしたり、煙が出たりしたときは、速やかに作業を中止してください。
繰り返します、少しでも異常を感じたら、「直ぐに回転を止める」ことが重要です!(トリガースイッチを放せば止まります)
そして、回転が止まったことを確認して、ノコ刃の状態を確認してください。
㊟機種によっては、連続運転機能がついた丸ノコがありますが、慣れるまでは使用しない方が安全です。
㊟ノコ刃が熱くなっていることがあるので、火傷への注意が必要です!
多くの場合は、「ノコ刃の切れ病み」が原因になっています。
もし、上記のような症状が現れた場合は、ノコ刃(チップソー)を早めに交換することをおすすめします。
また、ノコ刃は切断する材料によって、多くの種類がありますので、材料に適した種類であることも確認してください。
4.丸ノコのベースプレートが材料に密着していない
原因
こんな失敗をするのは私くらい…だと思いますが、恥ずかしながら過去に2回くらい経験しましたので、勇気をもって掲載します。
丸ノコのベースプレートと材料の間に、小さな異物が挟まっていたために、何度トライしてもキックバックが起こり、上手く切断できませんでした。
対策
シンプルに…異物を取り除くだけで解決します。
私の失敗例…その1:切断する材料の表面に木工ボンドが付着して固まっていました。
私の失敗例…その2:丸ノコのベースプレートに厚み1mmくらいのマグネットシートが張り付いてました。
いずれの場合も、事前に確認していれば防げた失敗ですが、こんな些細(?)なことでも「キックバック」は起こりますので、気を付けましょう。
それと、品質の悪い丸ノコの場合、ベースプレートがフラットじゃない(平らじゃない)場合があります。
また、ベースプレートの強度が低くいために、使用中に変形してしまうこともあるようです(最悪です)
このような低品質の丸ノコは、ちゃんと使っていてもキックバックが発生しますので、できるだけ買わないようにするのが得策です!
不運にも…もし買ってしまった場合は、使う前には必ず点検しましょう。
※丸ノコの選び方については、別記事「丸ノコのおすすめ機種6選と失敗しない選び方」をご参照ください。
丸ノコのおすすめ機種6選と失敗しない選び方丸ノコの安全対策・キックバックを克服して安全に使うための六カ条
1.丸ノコをしっかりと保持しよう
電動工具を使うときの基本ですが、必ず作業用手袋を着用しましょう。
作業用手袋は手を保護するだけではなく、電動工具をしっかりと保持(グリップ)することができるので、キックバックの対策になるからです。
でも、「軍手は絶対にダメ」です!
なぜなら、一般的な「軍手」は表面に繊維の毛羽立ちがあり、それが工具の回転部分に巻きまれると「大けが」の原因になるからです。
私も過去に巻き込まれ、とても怖い思いをしたので、絶対にやめてください。
これは厚生労働省が定める「労働安全衛生規則 第二編 安全基準 第一章 機械による危険の防止 第一節 一般基準 第百十一条(手袋の使用禁止)」にも規定されています。
労働安全衛生規則 第百十一条
おすすめの作業用手袋:「昭和グローブ製 組立グリップ」
甲の部分は伸縮性のある薄い繊維でできており、掌の部分は柔軟性に富んだゴムがコーティングされています。
手に良くなじんで違和感が少なく、しかも指先や掌はゴムでしっかり保護されている優れもので、私にとって木工や車いじりでは欠かせないアイテムになりました。
「白いので汚れやすい」といった弱点もありますが、ついつい汚れを放置しがちな作業手袋において、「汚れの可視化」は大切な材料を汚さないためには好都合です。
でも「白はどうしても・・・」という方には、黒もラインナップされています!
保護力に加えグリップ力にも優れているので、女性にもぜひ使ってもらいたい逸品ですね。
2.材料を正しく固定して丸ノコを使おう
材料に対して、適切な場所に枕木を使い、クランプを使用して正しく固定しましょう。
そうすることで、丸ノコの操作に集中でき、キックバックの防止につながります。
おすすめのクランプ:高儀クイックバークランプ200mm
材料を挟み込み、グリップのレバーを握るだけでしっかりと固定でき、解除はボタンを押すだけのクイックリリース。
材料の固定には欠かせない優れものです♪
3.ノコ刃の出代を正しく調整して丸ノコを使おう
ノコ刃の出代は、切断する材料の厚み+3mm程度に調整しましょう。
出代が多すぎると、材料に対するノコ刃の作動範囲が少なくなるため、ノコ刃に対する負荷が集中し、キックバックの原因となることがあるからです。
下図は、材料の厚みに対して作用するノコ刃の作動範囲(赤いギザギザ部分)が、ノコ刃の出代によって変化する様子を表したものです。
左は出代が大きすぎる場合の図で、材料の厚みに対してノコ刃が3山分しか働いていません。
一方、右図のように出代が最適であれば、5山分のノコ刃が働き、材料を効率よく切断できることがわかります。
このように、ノコ刃の出代調整によって、ノコ刃への負荷に大きな差があることが確認できます、少し面倒ですがしっかりと確認しましょう。
4.正しい位置で丸ノコを使おう
まずは、丸ノコの前後に立たないことが、安全対策の第一歩!
ノコ刃の回転で、材料の破片などが飛んできたり、キックバックで丸ノコ本体が後ろにはじかれたりすることを想定した防御策です。
可能性としては高くなくとも、思わぬハプニングにも対応できる体制こそが、安全で楽しいDIYにつながります。
5.用途(板厚)に合った丸ノコを使おう
同じ木工作業でも、材料の厚みによって、使いやすい丸ノコのサイズは異なります。
もちろん、大きな丸ノコがあれば、ほとんどの作業に使うことができるので、「大は小を兼ねる」も間違いではありません。
でも、自分のDIY傾向に合わせたサイズを選択することで、キックバックなど不測の事態を減少させ、結果的に丸ノコの活用範囲が広がることにもつながります。
言葉を替えると、自分にとっての「使いやすい♪」を見つけることが、キックバックの軽減につながるんですね。
当然ですが、切断作業に集中できる「コードレスタイプ」の選択も大きなポイントになります!
次の項では、材料の厚みごとの「使いやすさの目安表」を掲載しますので、参考にしてください。
使いやすさの目安表(材料の厚み VS 丸ノコの直径)
丸ノコのサイズ(直径) | 直径85mm | 直径125mm | 直径147mm | 直径165mm |
最大切込み厚 | 約26mm | 約47mm | 約48mm | 約57mm |
板厚3mm | ◉ | 〇 | △ | △ |
板厚5mm | ◉ | 〇 | 〇 | 〇 |
板厚10mm | ◉ | ◉ | ◉ | 〇 |
板厚12mm | 〇 | ◉ | ◉ | ◉ |
38mm~40mm (2×4材等) | ✕ | △ | 〇 | ◉ |
◉=バッチリ 〇=普通に使える △=少し使い難い ✕=使えない
6.目的に合ったよく切れるノコ刃(チップソー)を選ぼう
丸ノコのキックバックは、ノコ刃(一般的にチップソーと呼びます)の消耗によっても発生します。
木材の切断方向には「木目に沿った縦目」と「木目に直交した横目」があり、消耗を遅らせるためには、それに見合ったチップソーを使うことが基本です。
また、ベニヤ板(合板)は縦目横目が交互に重なった構成になっているので、ノコ刃の消耗が早いと言われています。
そこで、おすすめできるのが、縦目、横目、合板にも使えるマルチタイ プのチップソーとなります。
これらのチップソーの中には、刃の側面の摩擦係数を減らすことで、ノコ刃の過熱を防ぐ工夫が施されたタイプがあり、キックバック対策にとても有効です。
以下に「おすすめのチップソー」を紹介しますので、ぜひお試しください。
おすすめのチップソー(直径85mm)
このサイズのチップソーは、ほとんど選択肢がないので、ボッシュ、マキタの純正品の選択が無難です。
それぞれの回転数やトルクに適した仕様になっており、使いやすさに焦点がおかれているからです。
ボッシュ 1619P11768 | マキタA-19118 | |
外 径 | 85mm | 85mm |
内 径 | 20mm | 20mm |
刃 数 | 20mm | 20mm |
刃 厚 | 1.0mm | 1.0mm |
おすすめのチップソー(直径125mm, 147mm)
マキタの「鮫肌シリーズ」は「抜群の切れ味」との評判で、プロの職人さんにも人気のあるチップソーです。
一方のSK11「くろプラス」も、「高含有量フッ素コーティング」によって側面の抵抗が低くく、なめらかな切れ味が人気です。
マキタ鮫肌レーザー スリットチップソー | SK11くろプラス | |
外 径 | 125mm | 147mm |
内 径 | 20mm | 20mm |
刃 数 | 35 | 52 |
刃 厚 | 1.4mm | 1.5mm |
おすすめのチップソー(直径165mm)
マキタの「鮫肌シリーズ」は、静かさと切れ味に定評があり、職人さん一押しのチップソーです。
ボッシュの「エキスパートシリーズ」は新製品なので、日本でのレビューはあまり聞きませんが、お膝元のドイツでは「シャープな切れ味」と「静粛性」に加え「バッテリーが長持ちする」と、評価の高いチップソーです。
「SK11くろプラス」は安定の人気で、最もコストパフォーマンスに優れたチップソーとして、多くのDIYビルダーに支持されています。
マキタ鮫肌 プレミアムホワイト | ボッシュ、エキスパート 2608644509 | SK11 くろプラス | |
外 径 | 165mm | 165mm | 165mm |
内 径 | 20mm | 20mm | 20mm |
刃 数 | 55 | 48 | 72 |
刃 厚 | 1.5mm | 1.5mm | 1.5mm |
まとめ
丸ノコを使う上で、どうしても避けられない現象が「キックバック」…
でも、安全対策を整えこれを克服できれば、あとは「上達あるのみ」です。
私も最初のころは、ずいぶんと悩まされましたが、慣れてくると「そろそろ来そうだな…」とか、「このまま進めると危ないな…」なんて予測ができるようになり、今では問題なく対処できるようになりました。
もちろん、たまには「ドキッ」とさせられることもあるので、油断は禁物なのですが…。
今回の記事では、そんな私の経験を元に「丸ノコのキックバック対策、原因と軽減方法」について解説してみました。
ちょっと怖かった「丸ノコ」も、これで大丈夫ですね!
丸ノコのおすすめ機種6選と失敗しない選び方