丸ノコは、直線をカットすることに特化したシンプルな電動工具です。
ですが、予備知識がなく準備を怠って使用すると、思いもよらないトラブルに見舞われることもあります。
よく知られている「キックバック」はその代表例ですが、実はそれ以外にも小さなトラブルはたくさんあるんです。
例えば、不用意に合板(べニア板など)を切断すると、場合によっては表面の層がはがれてしまい、使えなくなったりします。
ですが、このようなトラブルは、少しの知識と正しい選択で、かなり軽減できてしまうんです!
今回の記事では、そんな失敗経験を元にあなたにピッタリの「これだ!」を見つけてもらう方法を解説していきます。
そして、最後に「私のおすすめ」を紹介しますので、参考にしてもらえると嬉しいです。
丸ノコの種類について
電動丸ノコには、「テーブルソー」や「スライド丸ノコ」、そして「手持ち式丸ノコ」など、数種類の異なったタイプがあります。
「テーブルソー」は、固定された丸ノコに対して材料を動かして切断するタイプ。
「スライド丸ノコ」は、材料を固定する装置が設けられ、その材料に対して軌道が固定された丸ノコをスライドさせて切断するタイプ。
どちらのタイプも、材料の寸法切りにはとても便利ですが、長い距離の切断はできません。
なので今回は、DIYでもっとも汎用性の高い「手持ち式丸ノコ」に焦点を絞って、解説を進めたいと思います。
丸ノコの選び方
それでは、丸ノコを選ぶときに重視するべき「7つのポイント」にそって説明を始めます。
1.電源
家庭用100Vコンセントにつなぐ「コード式」と、充電式バッテリーを搭載した「コードレス式」があり、価格的に魅力があるのはコード式になります。
ただ、丸ノコを使った安全な切断作業には、思った以上の集中力が要求されます。
なので、電源線の取り回しを気にせず、切断作業のみに注力できるコードレス式がおすすめです。
また、コードレス式の方が、平均的に騒音レベルが低いのも大きなメリットになります。
特に住宅地域で使用する場合は、静音性も大切なポイントになるでしょう。
2.チップソーの互換性
丸ノコの回転刃のことを「チップソー」と呼びますが、消耗品ですので、切れが悪くなると交換しなければなりません。
交換用のチップソーは、多くのメーカーから販売されており、価格や用途によって多くの選択肢があります。
ですが、丸ノコ本体のメーカーによっては、特殊な取付穴径(内径)を採用している場合があるので要注意です。
「よく切れるチップソーに交換したい!」と思っても、「内径が異なるので使えない…」では困ってしまいますからね。
チップソーの内径が、一般的な20mmであれば互換性に問題はないでしょう。
3.チップソーの出代(切断深さ)調整機構
「チップソーの出代調整」と書くと、「どのメーカーにも付いてるよ」という声が聞こえてきます。
ですが、この機構が不安定だと大きな事故につながりかねません。
「切断時に荷重を掛けることによって、どんどん切れ込みが深くなってしまう」場合があるからです。
チップソ-の出代調整機構は、「キックバック現象」にも大いに関係するので注意しなければなりません!
キックバック対策については、別記事「丸ノコのキックバックと安全対策」をご参照ください。
丸ノコのキックバックと安全対策!原因と軽減方法を解説します4.切断角度調整機構
手ノコで「材料を直角に切断する」のは、結構難しい作業になり、私は未だに苦手です。
「でも丸ノコだったら簡単」だと思いますよね?
でも、そうではない場合が結構あり要注意なんです。
切断角度の調整機構は、ほとんどの機種に搭載されているポピュラーな機構なのですが、一部の丸ノコでは「角度が安定しない」場合があるからです。
ベニヤ板などの薄板なら、まだマシなんですが、2×4材などの厚物の切断では大問題になります。
私が最初に買った丸ノコでは、90度に調整しても、気が付けば2~3度位くるってしまいます。
と言うよりも、そもそも「傾斜角0度」位置に合わせても、直角(垂直)には切れないんでよすね・・・。
このような品質問題は外観からは判断ができず、残念ながら買う前に確認することはほぼ無理なんです…。
なので、私は一流の工具メーカーさんの製品を強く推奨します。
新進メーカーさんには申し訳ないのですが、品質や耐久性、安全性は、製造メーカーの経験値に因るところが大きいからです。
価格だけで選んで、「使えない・・・」にならないよう、気を付けてくださいね。
5.ベースプレートの強度
ベースプレートは、丸ノコの使用中、常に材料と密着させる部分ですので、フラット(平ら)であることが、とても重要です。
でも、安価な工具の場合、強度不足によってひずんでしまうものも少なくありません。
一度ひずんでしまうと、簡単には修正できませんので、購入時には「信頼できるメーカー」を選びましょう。
6.丸ノコのサイズ(チップソーの直径)
同じ木工作業でも、材料の厚みによって、使いやすい丸ノコのサイズは異なります。
まずは、どんな材料をよく使うのかを考え、その材料の厚みに一番適したサイズの丸ノコを選んでみましょう。
もちろん、大きな丸ノコがあれば、ほとんどの作業に使うことができるので、「大は小を兼ねる」も間違いとは言えません。
でも、オールラウンドプレーヤー=使いやすい、にはならない場合が多いのも事実です。
大きくて重たい丸ノコで、薄い材料を切ることを想像してみると分かりますよね。
なので、自分のDIY傾向に合わせたサイズを選択することが「使いやすい」につながり、結果的に丸ノコの活用範囲が広がることになります。
言葉を代えると、「自分にとって使いやすいサイズ」を選ぶことが、最もリーズナブルで賢い選択といえるでしょう。
たとえば、「薄板加工が多い方は、小型丸ノコを選び、2×4材を切るときは手ノコにする」こんな割り切りもいいと思います!
丸ノコのサイズ選択には、次項の「使いやすさの目安表」を参考にしてください。
7.チップソーの直径と使いやすさの目安表(対材料厚)
直径85mm | 直径125mm | 直径147mm | 直径165mm | |
最大切込み厚 | 約26mm | 約47mm | 48mm | 約57mm |
板厚3mm | ◎ | ○ | △ | △ |
板厚5mm | ◎ | ○ | ○ | ○ |
板厚10mm | ◎ | ◎ | ◎ | ○ |
板厚12mm | ○ | ◎ | ◎ | ◎ |
2×4材等(38~40mm) | ✕ | △~○ | ○ | ◎ |
丸ノコのおすすめ6選
ここまで、品質面や使いやすさについて説明して来ましたが、次にサイズごとの「おすすめ機種」を紹介します!
色々なメーカーから、様々な機能が搭載された丸ノコが発売されており、価格帯もイロイロです。
ですが、ここでは基本機能と構造がしっかりしていて、安全に長~く快適に使える機種に限定して紹介していきます。
もちろん、バッテリー充電時の火災や感電の心配が少なく、万一の場合の保証もしっかりしているメーカーが大前提なので安心してください。
直径85mm その1:マキタコードレス丸ノコHS301DSH
スペック
品 番 | HS301DSH |
バッテリー電圧 容量 | 10.8V DC 1.5Ah |
ノコ刃直径(内径) | 85mm(20mm) |
回転数/分 | 1500 |
最大切断厚 | 25.5mm |
傾斜切断角度 | 左右0~45° |
重量 | 1.5kg |
説明
使用感と作業性を変える10.8Vスライド式バッテリ。
手ノコ感覚の手軽さで、パワフルに切断!!
(公式ページから抜粋)
おすすめ理由
軽量で使いやすく、音も静かな点がおすすめの理由です。
薄物メインになりますが、プロの職人さんも信頼するマキタ品質+手ノコ感覚で使える便利さがDIYの幅を広げるでしょう。
標準バッテリーが1.5Ahなので、持続時間は少し短めですが、その分リーズナブルな価格が魅力になります。
直径85mm その2:ボッシュコードレス丸ノコGKS10.8V-LI
スペック
品 番 | GKS10.8V-LI |
バッテリー電圧 容量 | 10.8V DC 2.0Ah 別売り |
ノコ刃直径(内径) | 85mm(20mm) |
回転数/分 | 1400 |
最大切断厚 | 26.5mm |
傾斜切断角度 | 0~45° |
重量 | 1.4kg |
説明
コンパクト&ハンディなデザイン:最大切断深さが26.5mmの10.8Vコードレス丸のこ
- カンタンに操作できるコンパクトデザインを採用し、快適に切断可能
- グリップが細く、軽量のため、作業中に制御しやすい
- ボッシュのガイドレールシステムに取り付け可能(アダプター使用)
(公式ページより抜粋)
おすすめ理由
ベニヤ板などの薄物材料に特化した、女性にも使いやすい最軽量タイプで低騒音の丸ノコです。
軽量コンパクトながら、2.0Ahの高容量バッテリーを搭載できるのが決め手になりました。
厚物は切れませんが、キックバックが起きてもマイルドで、手ノコ代わりに気軽に使える丸ノコです。
直径125mm:マキタコードレス丸ノコHS474DRG
スペック
品 番 | HS474DRG |
バッテリー電圧 容量 | 18V DC 6.0Ah |
ノコ刃直径(内径) | 125mm(20mm) |
回転数/分 | 5400 |
最大切断厚 | 47mm |
傾斜切断角度 | 右0~45° 左0~15° |
重量 | 2.7kg |
説明
■「パワー」「精度」「剛性」全てを追求
■作業能率約30%アップ
■高速回転5,400min-1
■高品質アルミサブベース
(メーカーサイトより抜粋)
おすすめ理由
直径125mmのチップソーながら最大切断厚47mmを実現し、高効率ブラシレスモーターの採用で5,400rpmの高回転を発揮しているのが大きな魅力です。
また、大工さんの間で「抜群の切れ味」と「静粛性」で人気の高い、「鮫肌プレミアムホワイトチップソー」が標準装備されている点も見逃せません。(かなり気持ちいい切れ味です!)
価格は少し高くなりますが、薄物から厚物まで、かなり満足度の高い「丸ノコ」となります。
「一台で全てを!」と考えているあなたには、絶対にコレがおすすめです。
直径160mm:ボッシュコードレス丸ノコ Universal Circ 18V-53
スペック
品 番 | Universal Circ 18V-53 |
バッテリー電圧 容量 | 18V DC 2.5Ah(別売り) |
ノコ刃直径(内径) | 160mm(20mm) |
回転数/分 | 4300 |
最大切断厚 | 53mm |
傾斜切断角度 | 0~45° |
重量 | 3.3kg |
説明
正確な直線切断が可能なクラス最高のパワフルな丸のこ
• 53mmの切断能力で、多くのDIYの木材加工に対応可能
• 山にカーバイドチップを採用したプレミアム160mm Optilineのこ刃により、精密な切断が可能
• 正確な直線切断とベベル切断が可能なBosch Home & Gardenのガイドレールシステム
• 2.5Ahバッテリー充電1回あたり33mという圧倒的な切断能力(19mmチップボード)
• テラスデッキやチップボード棚を作るのに最適
• コードレスクリーナーを接続すれば粉じんを90%以上除去
• ボッシュ 18V POWER FOR ALLバッテリーに対応
(メーカー公式サイトより)
おすすめ理由
比較的求めやすい価格で、中物から厚物まで無難にこなせるのが、「ボッシュUniversal Circ 18V-53 」です。
「切断線ガイド」や、ノコ刃を簡単に交換できる「スピンドルロック」機能が付いているので、丸ノコが初めてのDIYビルダーにもおすすめできます。
18V2.5Aのバッテリーを含めて3.3kgの重量は、軽量ではありませんが安定した切断作業に最適な重量だと思います。
ボッシュらしい高耐久・高効率設計のUniversal Circ 18V-53は、DIYに最適な機種といえるでしょう。
直径165mm その1:ボッシュコードレス丸ノコGKS18V-57
スペック
品 番 | GKS 18V-57 |
バッテリー電圧 容量 | 18V DC 4.0Ah(別売り) |
ノコ刃直径(内径) | 165mm(20mm) |
回転数/分 | 3400 |
最大切断厚 | 57mm |
傾斜切断角度 | 左右0~45° |
重量 | 4.0kg |
説明
最大切断深さ57mmの頑丈な18Vコードレス丸のこ
■パワフルなモーターで強力な切断性能を実現、最大切断深さ57mm
■ブレードの動作をすぐに停止する高速ブレーキ機能を採用し、ユーザーの安全性を強化
■スチール製のベースプレートとアルミニウムダイカスト製のロワーガードを組み合わせた丈夫な設計
(メーカー公式サイトより抜粋)
おすすめ理由
他のモデルと比較すると重ためですが、非常に頑丈で十分なパワーがありながら、比較的低騒音であることが、最大のおすすめの理由です。
また、価格もリーズナブルなので、材料の厚みによって丸ノコのサイズを使い分けする場合に、強い味方となってくれます!
「薄物には85mmタイプ、厚物には165mmタイプ」と、使い分けを考えているあなたに、おすすめしたいのが「ボッシュGKS 18V-57」です。
でも、重量が4kgあるので、この点はご注意ください。
「重たいのは苦手」という方や、持ち運びを前提としている方には、お勧めできません。
※私の場合は、切り始めのアプローチまでは重さを感じますが、切断を始めると「この重さ」が、安定性に一役買っているように思います。
直径165mm その2:マキタコードレス丸ノコHS631DGXS
スペック
品 番 | HS631DGXS |
バッテリー電圧 容量 | 18V DC 6.0Ah |
ノコ刃直径(内径) | 165mm(20mm) |
回転数/分 | 5000 |
最大切断厚 | 66mm |
傾斜切断角度 | 左0~5°右0~55.5° |
重量 | 3.0kg |
説明
型枠からきざみ、造作作業まで!
全ての作業をこの一台で。「鮫肌」仕様登場!
■鮫肌チップソー
■最大切込み深さ 66MM
■5,000回転/分
■質量3.0kg
(メーカー公式サイトより)
おすすめ理由
なんといっても、最大切断厚が66mmで重量は3.0kg!これが最大のポイントです!
ボッシュにもGKS 18V-68Cという、最大切断厚70mmのすごいモデルがありますが、バッテリーレス重量が4.0kgと重く、使いやすさを考えると断然「マキタHS631DGXS」になります。
このクラスになると、切断能力においても100Vのコード式に勝るとも劣らない性能を発揮します。
価格は少々高くなりますが、DIY用途としては「最高峰!」と言ってもいい製品です。
もちろん付属するチップソーは「鮫肌プレミアム」!
すばらしい「切れ味」と「静粛性」が楽しめるでしょう♫
チップソーの種類について
丸ノコを安全で効率的に活用するためには、切断する材料に適したチップソーに交換することが、とても効果的です。
同じ木材でも、種類や木目の方向によって硬さの違いがあり、さらに合板(ベニヤ板)やMDF材などのように、接着剤や樹脂成分を含んだ素材も多く、チップソーに対する負荷が高くなっているからです。
ただ最近では、多様化した材料に対応できる、優秀なチップソーも販売されていますので、それらを選択するという早道もあります。
機種に合った外径と内径を確認し、あとは歯数を選択するだけで「快適な作業」を実現できるんです!
良く切れるチップソーは、キックバックの防止にもつながります。
合板などの切れにくい素材には、歯数の多いタイプの方が長持ちし、切断面も綺麗になる傾向がありますので、用途に合わせて選択しましょう。
次の項では、おすすめのチップソーを紹介しますので、参考にしてください。
おすすめのチップソー:直径85mm
このサイズのチップソーは、ほとんど選択肢がないので、ボッシュ、マキタの純正品の選択が無難です。
それぞれの機種に合わせて、「回転数」や「トルク」を考慮した仕様になっているからです。
ボッシュ 1619P11768 | マキタA-19118 | |
外径mm | 85 | 85 |
内径mm | 20 | 20 |
刃数 | 20 | 20 |
刃厚mm | 1.0 | 1.0 |
おすすめのチップソー:直径125mm/160mm
マキタの「鮫肌シリーズ」は「抜群の切れ味」との評判で、プロの職人さんにも人気のあるチップソーです。
一方のSK11「くろプラス」も、「高含有量フッ素コーティング」によって側面の抵抗が低くく、なめらかな切れ味が人気です。
マキタ鮫肌レーザースリット | SK11くろプラス | |
外径mm | 125 | 160 |
内径mm | 20 | 20 |
刃数 | 35 | 52 |
刃厚mm | 1.4 | 1.5 |
おすすめのチップソー:直径165mm
マキタの「鮫肌シリーズ」は、静かさと切れ味に定評があり、職人さん一押しのチップソーです。
ボッシュの「エキスパートシリーズ」は新製品なので、日本でのレビューはあまり聞きませんが、お膝元のドイツでは「シャープな切れ味」と「静粛性」に加え「バッテリーが長持ちする」と、評価の高いチップソーです。
「SK11くろプラス」は安定の人気で、コストパフォーマンスに優れたチップソーとして、多くのDIYビルダーに支持されています。
ボッシュ、エキスパート 2608644509 | マキタ鮫肌プレミアムホワイト | SK11くろプラス | |
外径mm | 165 | 165 | 165 |
内径mm | 20 | 20 | 20 |
刃数 | 48 | 55 | 72 |
刃厚mm | 1.5 | 1.5 | 1.5 |
チップソーのサイズ表記について
チップソーにはサイズを表す表記がありますが、メーカーによって異なる場合がありますので、以下に代表的な例を記載します。
【マキタの場合】165-60T(外径165mm、歯数60)
165×1.6×20(外径65mm、刃厚1.6mm、内径20mm)
【SK11の場合】 165×1.5×72P(外径165mm、刃厚1.5mm、歯数72)
内径は別途表記されています
【ボッシュの場合】 165×1.5/1.0 × 20(外径165mm、刃先厚1.5mm、㊟鋸身厚1.0mm、内径20mm)
歯数は別途表記されています
㊟摩擦係数の低減を目的とし、鋸身(非切断部)厚を刃先より薄くしているそうです。
まとめ
丸ノコはシンプルな構造ですが、とても奥の深い電動工具でもあります。
イロイロな機種が販売されているので、選ぶときには迷ってしまうのですが、用途に合った「使いやすい!」にフォーカスすることが第一なんです。
そして、それが丸ノコの、安全で楽しい活用法にもつながるんですね。
もちろん、技術面も大切なのですが、最初からハードルを上げ過ぎると壁も高くなってしまいます。
まずは、あなたに一番適した「コレだ!」を見つけて、ユックリと腕を磨いていきましょう。